彼の友達
2006年8月16日お寺での焼香が終わり、場所は彼の家へとうつる。
彼の家で故人の思い出を語る場として、
ちょっとした宴会の席が設けられていた。
そこはお父さんの事務所で彼が配管工事をしたと聞いていた。
その場所ができてから、酔って帰ると家にはあがらずに
そこでよく寝ることがあったようで、
脱ぎ散らかした洋服やお菓子の袋が散乱していたらしい。
亡くなる前日、神戸から帰ってきた弟がその場所に行ったとき、
その雑然とした部屋を見て、
「お父さんの仕事の場所なんやから、キレイにしとかな」
と怒ったらしい。
ただ、それはいつものことで、彼の部屋はやっぱり散らかっていたし、
それを弟が片づけるのが常だった。
でも、その日だけは少し違って、
次の日朝起きてみると事務所がピカピカに掃除されてたみたいで、
「死ぬ前に片づけていきおった」
って前に弟が話していたのを思い出した。
そんな不思議なことってやっぱりあるんだよね。
実際、私も亡くなる二日前に神戸で会ったんだけど、
何度も彼の仕事の都合でなくなりかけたりしてて、
でも結局、夜勤明けのあと、町内で開かれたマラソン大会に出場して、
その後神戸まで会いに来てくれた。
いつもならそんなハードなスケジュールなら予定変更にするはずなのに、
「そんな忙しいならまたでいいよ」
という私に、
「なんでそんなこと言うのよ」
と怒って、会いに来てくれた。
でも、やっぱり疲れてたみたいで約束の時間より3時間も遅れてきて、
それでも怒る気になれないような、
そんな人だった。
その場所には彼の幼稚園や小学校からの友達が10人くらい集まっていて、
いろんな話をしてくれた。
私が知らない話もたくさんあった。
彼は女の子の話をあまり友達にしない人で、
それは私も知っていたんだけど、
それでもそのうちの二人には私のことを話していたことを聞いて、すごく嬉しかった。
「広島の子やんね?僕聞いたことあるんよ。
結婚したいって言ってたの。あいつ本気やってんで。
で、僕な、その子に会わせてやって言ってたんよ。やっと会えたわ。」
と言ってくれたのは彼の幼稚園からの友達。
なんか、そんなこと亡くなってから聞くなんて、
とても皮肉だけど、彼は本気で私と結婚しようとしてくれてたのが分かってすごく嬉しかった。
その彼の話では、私に会うからといって遊びの誘いを断られたことが何度もあったらしくて、
「おかげでオレとあいつとの思い出が減ってんねん」
と言った。
いつも友達の方を大事にされていると思っていた私は、それも意外だった。
仕事、仕事となかなか会えなかったのも本当で、
土日も仕事でオレらもなかなか会えなかったと言っていた。
避けられてたわけじゃなかったんだ。今さらそんなことを思う。
それから私が亡くなる2日前に会ってたことを言うと、
みんなすごく驚いていた。
「あの日は夜勤あけでマラソン走ったんだよね?」
と言うと、
「そうそう、でもあいつ、マラソンはキャンセルしたんよな」
って。え?っと思って、
「私には走って来たって言ってたよ」
って言ったら、
「キンゾウ、なんでそんな嘘つくんかなぁ。あの日の朝、すごい雨降って、
マラソンはあったんやけど、走るのやめようってなったんよ」
彼はあの日マラソンは走ってなかったんだ。
きっと夜勤明けで疲れて眠ってて、
遅れた言いわけにマラソン走ったって言ってしまったんだろう。
体痛いとか、マラソン面白かったから次も走るわ、とか、
そんなこと言ってたあの日の彼を思いだして、
おかしくなった。
そんなどうでもいいとこで小さな嘘をつく人だった。
彼の友達も
「きっとマラソン走ったことにした方が話がうまくいったんやろな。」
と言って笑ってた。
彼の友達の中で、彼はとてもいいやつで、
でも悪いこともいっぱいしてて、
そのくせ泣き虫で、
やっぱりいいやつだった。
私もそんな彼と6年過ごせたことが嬉しくなった。
彼の家で故人の思い出を語る場として、
ちょっとした宴会の席が設けられていた。
そこはお父さんの事務所で彼が配管工事をしたと聞いていた。
その場所ができてから、酔って帰ると家にはあがらずに
そこでよく寝ることがあったようで、
脱ぎ散らかした洋服やお菓子の袋が散乱していたらしい。
亡くなる前日、神戸から帰ってきた弟がその場所に行ったとき、
その雑然とした部屋を見て、
「お父さんの仕事の場所なんやから、キレイにしとかな」
と怒ったらしい。
ただ、それはいつものことで、彼の部屋はやっぱり散らかっていたし、
それを弟が片づけるのが常だった。
でも、その日だけは少し違って、
次の日朝起きてみると事務所がピカピカに掃除されてたみたいで、
「死ぬ前に片づけていきおった」
って前に弟が話していたのを思い出した。
そんな不思議なことってやっぱりあるんだよね。
実際、私も亡くなる二日前に神戸で会ったんだけど、
何度も彼の仕事の都合でなくなりかけたりしてて、
でも結局、夜勤明けのあと、町内で開かれたマラソン大会に出場して、
その後神戸まで会いに来てくれた。
いつもならそんなハードなスケジュールなら予定変更にするはずなのに、
「そんな忙しいならまたでいいよ」
という私に、
「なんでそんなこと言うのよ」
と怒って、会いに来てくれた。
でも、やっぱり疲れてたみたいで約束の時間より3時間も遅れてきて、
それでも怒る気になれないような、
そんな人だった。
その場所には彼の幼稚園や小学校からの友達が10人くらい集まっていて、
いろんな話をしてくれた。
私が知らない話もたくさんあった。
彼は女の子の話をあまり友達にしない人で、
それは私も知っていたんだけど、
それでもそのうちの二人には私のことを話していたことを聞いて、すごく嬉しかった。
「広島の子やんね?僕聞いたことあるんよ。
結婚したいって言ってたの。あいつ本気やってんで。
で、僕な、その子に会わせてやって言ってたんよ。やっと会えたわ。」
と言ってくれたのは彼の幼稚園からの友達。
なんか、そんなこと亡くなってから聞くなんて、
とても皮肉だけど、彼は本気で私と結婚しようとしてくれてたのが分かってすごく嬉しかった。
その彼の話では、私に会うからといって遊びの誘いを断られたことが何度もあったらしくて、
「おかげでオレとあいつとの思い出が減ってんねん」
と言った。
いつも友達の方を大事にされていると思っていた私は、それも意外だった。
仕事、仕事となかなか会えなかったのも本当で、
土日も仕事でオレらもなかなか会えなかったと言っていた。
避けられてたわけじゃなかったんだ。今さらそんなことを思う。
それから私が亡くなる2日前に会ってたことを言うと、
みんなすごく驚いていた。
「あの日は夜勤あけでマラソン走ったんだよね?」
と言うと、
「そうそう、でもあいつ、マラソンはキャンセルしたんよな」
って。え?っと思って、
「私には走って来たって言ってたよ」
って言ったら、
「キンゾウ、なんでそんな嘘つくんかなぁ。あの日の朝、すごい雨降って、
マラソンはあったんやけど、走るのやめようってなったんよ」
彼はあの日マラソンは走ってなかったんだ。
きっと夜勤明けで疲れて眠ってて、
遅れた言いわけにマラソン走ったって言ってしまったんだろう。
体痛いとか、マラソン面白かったから次も走るわ、とか、
そんなこと言ってたあの日の彼を思いだして、
おかしくなった。
そんなどうでもいいとこで小さな嘘をつく人だった。
彼の友達も
「きっとマラソン走ったことにした方が話がうまくいったんやろな。」
と言って笑ってた。
彼の友達の中で、彼はとてもいいやつで、
でも悪いこともいっぱいしてて、
そのくせ泣き虫で、
やっぱりいいやつだった。
私もそんな彼と6年過ごせたことが嬉しくなった。
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