顔
2006年8月22日Mちゃんの家にいる間、
私はずっと泣いていた。
しばらくして旦那さんが帰って来た。
お寺にお葬式の手伝いに行っていた。
小学生からずっと一緒で、
前日のお通夜にも行ってきたと聞いた。
幼なじみを亡くしたんだから自分だって辛いはずなのに、
私のことをすごく気づかってくれていて、
頭を挟まれた事故で、
顔の傷が激しいから見るんだったら覚悟をしておいたほうがいいって言われ、
怖くてまた涙が出た。
私は見ることができるのだろうか、そう思った。
Mちゃんの話では前日は彼の死に顔が頭に焼き付いて、
旦那さんは一睡もできなかったらしい。
しばらくして旦那さんの携帯が鳴る。
私が淡路に来ていることを
彼のお母さんと弟が聞いて、
会いたいって言っているらしかった。
前日のお通夜では二人とも泣き崩れて見ていられなかったらしい。
すごく仲の良い家族だった。
彼は弟のことが本当に大好きで、
彼のためにどんなことでもやってあげていた。
お葬式まではまだ時間があったんだけど、
それからすぐにお寺に向かった。
車で5分くらいでお寺について、
小さな商店街を歩いて抜けて、
その正面にお寺があった。
彼が若いということもあり、
お寺の周りにはもうすでにたくさんの人が集まっていた。
お寺の敷地内には入りきらなかった花輪が通りにまで並べられている。
歩いては立ち止まり、泣きそうになるのをこらえた。
隣でMちゃんがずっと私を支えてくれていた。
その短い距離をどのくらいかけてたどり着いたのだろう。
お寺についてしばらく外にいると、
お母さんと弟が私を見つけて外に出てきた。
泣きだす私に弟は一瞬、躊躇をして、
お母さんが私一人で行くから、というようなしぐさで弟を止めた。
「遠いところありがとう」
と言われて、
私はなんと言っていいかわからず、
おじぎをした。
それから事故のこと、
病院でのことを聞いた。
私も2日前に神戸で会っていたことを伝え、
彼の最期がどうだったのかを聞いた。
それから彼が眠っているところへ。
棺が置いてあって、
入口からそれをしばらく眺めていた。
近くに行くのが怖くて動けない。
Mちゃんが
「最後だから見てあげよう」
といって私の背中を押す。
一歩一歩近づいて、
ようやく側まで来て、
彼の顔を見た。
「違う」
おおげさではなくて、最初、本当にそう思った。
彼じゃないって。
彼は全体的に細く、顔も小さい。
目がくりっとして、
口は小さくて、
かわいらしい顔立ちだった。
でもその時の彼の顔は、
棺いっぱいに腫れた顔。
内出血で黒く変色した肌。
別人だった。
よく見ると口の形や鼻の形で
かろうじて彼なのかもって思うくらい。
彼の弟から聞いた話では、
ダンプカーに挟まれた衝撃で頭がい骨が粉々になって、
病院に運ばれた時は顔がない状態だったらしい。
病院の先生も延命処置もだけど、
顔をなんとかしないと家族にも会わせられないということで、
整形外科の先生が針金やプラスチックのようなものを
顔に入れて、ようやくここまではもどったようだった。
私はどうしても彼だと思うことができなくて、
棺の側で泣くこともなく、
ただボーッと彼を見ていた。
私はずっと泣いていた。
しばらくして旦那さんが帰って来た。
お寺にお葬式の手伝いに行っていた。
小学生からずっと一緒で、
前日のお通夜にも行ってきたと聞いた。
幼なじみを亡くしたんだから自分だって辛いはずなのに、
私のことをすごく気づかってくれていて、
頭を挟まれた事故で、
顔の傷が激しいから見るんだったら覚悟をしておいたほうがいいって言われ、
怖くてまた涙が出た。
私は見ることができるのだろうか、そう思った。
Mちゃんの話では前日は彼の死に顔が頭に焼き付いて、
旦那さんは一睡もできなかったらしい。
しばらくして旦那さんの携帯が鳴る。
私が淡路に来ていることを
彼のお母さんと弟が聞いて、
会いたいって言っているらしかった。
前日のお通夜では二人とも泣き崩れて見ていられなかったらしい。
すごく仲の良い家族だった。
彼は弟のことが本当に大好きで、
彼のためにどんなことでもやってあげていた。
お葬式まではまだ時間があったんだけど、
それからすぐにお寺に向かった。
車で5分くらいでお寺について、
小さな商店街を歩いて抜けて、
その正面にお寺があった。
彼が若いということもあり、
お寺の周りにはもうすでにたくさんの人が集まっていた。
お寺の敷地内には入りきらなかった花輪が通りにまで並べられている。
歩いては立ち止まり、泣きそうになるのをこらえた。
隣でMちゃんがずっと私を支えてくれていた。
その短い距離をどのくらいかけてたどり着いたのだろう。
お寺についてしばらく外にいると、
お母さんと弟が私を見つけて外に出てきた。
泣きだす私に弟は一瞬、躊躇をして、
お母さんが私一人で行くから、というようなしぐさで弟を止めた。
「遠いところありがとう」
と言われて、
私はなんと言っていいかわからず、
おじぎをした。
それから事故のこと、
病院でのことを聞いた。
私も2日前に神戸で会っていたことを伝え、
彼の最期がどうだったのかを聞いた。
それから彼が眠っているところへ。
棺が置いてあって、
入口からそれをしばらく眺めていた。
近くに行くのが怖くて動けない。
Mちゃんが
「最後だから見てあげよう」
といって私の背中を押す。
一歩一歩近づいて、
ようやく側まで来て、
彼の顔を見た。
「違う」
おおげさではなくて、最初、本当にそう思った。
彼じゃないって。
彼は全体的に細く、顔も小さい。
目がくりっとして、
口は小さくて、
かわいらしい顔立ちだった。
でもその時の彼の顔は、
棺いっぱいに腫れた顔。
内出血で黒く変色した肌。
別人だった。
よく見ると口の形や鼻の形で
かろうじて彼なのかもって思うくらい。
彼の弟から聞いた話では、
ダンプカーに挟まれた衝撃で頭がい骨が粉々になって、
病院に運ばれた時は顔がない状態だったらしい。
病院の先生も延命処置もだけど、
顔をなんとかしないと家族にも会わせられないということで、
整形外科の先生が針金やプラスチックのようなものを
顔に入れて、ようやくここまではもどったようだった。
私はどうしても彼だと思うことができなくて、
棺の側で泣くこともなく、
ただボーッと彼を見ていた。
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